ADHD原因
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ADHDの原因 ってなに?脳の機能障害?遺伝も関係するの?

公開日
更新日

 
執筆:須賀 香穂里(ヘルスケアライター)
医療監修:豊田早苗(医師、とよだクリニック院長)
 
 
ADHDの原因 をご存知ですか? ADHD(Attention-Deficit/Hiperactivity Disorder)は、多動性・不注意・衝動性という3つの特徴的な行動が症状として中心的にみられる発達障害、で日本語では、注意欠陥・多動性障害といいます。
この障害の原因が大まかに脳の機能障害であることは判明していますが、明確な原因はまだ不明です(1)。ここでは、現在科学的な観点で考えられている ADHDの原因 について解説していきます。
 
※編集部注:
ADHDの概要と特徴について説明した「ADHDの特徴 って?シーン別、大人/子ども別に解説!」
 
ADHDの治療について説明した「ADHDの治療 って?薬物療法、心理療法など治療法を解説!」
も参考にしてください。

 
 

ADHDの原因 は脳にある?

 
ADHDの中核的な症状である多動性・不注意・衝動性に関しては、行動力・注意力をコントロールしている脳の前方部分にある前頭前野の機能が上手く働いていないことが関係していると考えられています(2)。
 
脳機能とADHD症状の関連を説明するために、前頭前野の主な働きを以下に挙げます。
 

  • ・周囲の状況を観察したり、先を推測したりし、自分がとるべき行動を決定する
  • ・1つのことに意識を向けて取り組む集中力
  • ・2~3のことを同時に行う同時行動力
  • ・自分の感情をコトンロールし、状況抜応じた対応や我慢が出来る

 

    ADHDでは、これらの前頭前野の働きが上手くいっていないため、

  • ・注意力がなく、忘れ物やミスが目立つ
  • ・物事に集中できず、じっとしていることができない
  • ・自分の感情がコントロールできない
  • ・物事を計画立てて実行、行動する事ができない

といった症状が起こってきます。
 
 

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神経伝達物質理論

 
脳は、無数の神経細胞の集まりからできており、外部からの刺激は電気信号として、神経細胞から神経細胞へと伝えられ情報が伝達されていきます。
この神経細胞から次の神経細胞へと情報を伝えていく重要な役割を担っているのが情報伝達物質と呼ばれる物質です。
 
神経伝達物質の量は脳の発達に伴って増大してきますが、ADHDの人は年齢に対して神経伝達物質の量が適正に増大せず、同年代の一般の人よりも少ないために様々なADHD特有の症状を引き起こすと考えるのが『神経伝達物質理論』です(3)。
 

神経伝達物質の量が足りない?

ADHDに特有の症状と関係している神経伝達物質は、ドーパミンとノルアドレナリンというものです(4)。ADHDの人は、このドーパミンやノルアドレナリンの量が一般の人よりも少ないことが判明しています(4)。ではなぜこれらの神経伝達物質の量が少なくなってしまうのでしょうか。※
 
※編集部注:
ADHDの原因とドーパミンについて説明した「ドーパミン とは? ドーパミン不足はADHDの原因の一つなの?」
 
ADHDの原因とノルアドレナリンについて説明した「ノルアドレナリン とは? ADHDの原因の一つなの?」
も参考にしてください。
 

  • ・そもそも作られる量自体が少ない(2)
    Forsbergら(2006)の報告によれば、ADHD患者の脳を検査したところ、ドーパミンの生成量の低下が見られ、その低下の度合いが不注意症状と関係していることが明らかになりました。
    これは、ADHD患者の脳は生まれつき神経伝達物質の生成量がわずかであることが考えられます。
  •  

  • ・再取り込み機能の異常
    神経細胞には、シナプスから放たれた神経伝達物質のうち、余ってしまったものをもう一度細胞内に回収する機能があります。これを再取り込みといいます(3)。

 
ADHDの人は、この再取り込みの機能が強く働いてしまい、脳内の神経伝達物質の量が必要以上に減ってしまっています(2)。それが原因となって衝動を抑えたり、集中力を持続させるために必要な信号がうまく伝わらず、ADHDの症状を引き起こすのです(3)。
 
このことからADHDの治療の際には、中枢刺激薬(メチルフェニデード)や再取り込み阻害薬(アトモキセチン)という薬によって再取り込み機能を抑制し、脳内の神経伝達物質の量を増やすことによってADHDの症状を抑える方法が一般的に用いられています(5)。
 
 

ADHDは遺伝する?

 
ADHDの原因を考えるうえで、遺伝学の観点から考えることはとても重要です。双生児や家族内でのADHDの発症率を調査研究した報告によると、一卵性双生児のように遺伝子の一致率が高いケースほど、ADHDが両者に発症しやすい傾向があることが分かっており、家系内にADHDの人がいる場合といない場合を比較すると、いる家系の方がADHDを発症する確率が高いことから、ADHDは親から子へ遺伝する可能性が高いことが明らかになっています(4)。ただし、ここでいう遺伝は、ADHDそのものが遺伝するのではなく、「ADHDの発症のしやすさ」が遺伝すると考えられています(6)。
 
どういうことかというと、親から子へ、神経伝達物質の生成や再取り込みをコントロールする遺伝子を受け継ぎます(3)。よって遺伝学の知見は先ほど紹介した神経伝達物質理論を考えるうえで重要なのです(3)。
 
ADHDの遺伝性を調査したデータに、両親が2人ともADHDであった場合、子供さんがADHDを発症する確率は20~50%程度。兄弟にADHDの子供さんがいる場合、その他の子供さんがADHDを発症する確率は25~35%程度というアメリカの調査結果がありますが、ADHDの遺伝的発症率を調査した報告結果は、この他にも複数あり、どれも数値にばらつきがあり、正確な遺伝的発症率は、分かっていないのが実情です。(6)
 
※編集部注:DNAのチェックについて詳しく説明した「DNAをチェック すると何がわかる?最近普及している 遺伝子 検査の内容とは?」も参考にしてください。
 
 

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タバコはADHDの原因になる?

 
受動喫煙と子どものADHD発症に関しては、ニコチンの脳細胞に対する作用機序、といった、決定的証拠となりうる研究結果が示されていないのが現状ですが、両者がまったく無関係であるとはいえない研究結果がいくつか出ているので、ご紹介します。
 
○受動喫煙によってADHD行動を起こしやすくなる
親が喫煙者で、タバコの副流煙を吸い込んでしまう受動喫煙の状態にさらされた子どもは、そうでない子に比べて意欠陥多動障害(ADHD)を含む精神・行動障害を起こしやすいという研究結果が出ています。
 
<参考>
ADHD 受動喫煙と子供のADHD – 心の病気について考えよう
 
マイアミ大学ミラー医学部のFrank Bandiera教授の研究によると、8歳から15歳の子供3000人を調査した結果、親がタバコを吸っている子供では、親がタバコを吸っていない子供に比べ、ADHDの兆候が見られる子供の確率が高かったとの事です。(8)
 
・妊娠中の母親の喫煙によって子どものADHDリスクが2.2倍に
デンマークでADHD児170 名と対照児3,765 名について症例対照研究が行われましたが、社会経済階層、父母兄弟の精神疾患既往歴、父母の年齢、低体重出生・早産・低アプガルスコアなどの危険因子の調整を行った結果、妊娠中の母親喫煙は児のADHDリスクを有意に2.2 倍増加させるという結果が出ています。
 
<参考>
NPO法人 日本禁煙学会 「受動喫煙と子供の健康」
 
・ADHDの子どもを持つ両親の喫煙率は平均より高い
日本におけるADHD 児を持つ20~24 歳の母親の喫煙率は87.5 %、および父親の喫煙率は75 %、ADHD 児を持つ「25~29 歳」の母親の喫煙率は43.9 %および父親の喫煙率は77.2 %の結果となり、特に母親の喫煙率は2 倍以上の高い割合となっていました。この結果はADHD の発症と何らかの関係があると考えられています。
 
さらに、ADHD児の父親の喫煙についても、70.1 %と高率であり、2005 年度の男性の喫煙率(JT 全国喫煙者率調査:20~29 歳 51.6 %、30~39 歳 54.6 %)よりもさらに高い傾向があり、母親だけでなく、父親の喫煙についても相関性が見られます。
ニコチンが胎児に与える影響を考慮している女性の場合、平均妊娠2.5 か月で禁煙が行われていたそうですが、大脳の形成は妊娠3 か月ぐらいまでに大半が形成されるため、脳の発生から考えると、妊娠に気が付いた段階での禁煙では遅い可能性があります。
 
<参考>
子どもの防煙研究会 NPO法人京都禁煙推進研究会 「第6回子どもの防煙研究会プログラム」
 
このような実験結果をふまえると、子どものADHD の発症と親の喫煙の間には、一定の関係があることが認められます。今後の研究結果が待たれるところです。
 
 

ADHDは多因子疾患

 
ADHDの原因としては神経伝達物質理論が有力ですが、その他にもいくつかの説が存在します。
 

  • ・脳の構造そのものが未発達
  • ・脳のいくつかの領域で血流が減少している
  • ・ニコチンやアルコールなど、中毒性の物質が脳にダメージを与えることにより発達異常を引き起こしている
  • ・食品添加物や着色料などが脳に影響を与えている
  • ・交通事故などによる脳への外傷がADHDを引き起こす
  • ・親や社会との関係が影響している

などです(4)。
 
記事の冒頭で、ADHDのはっきりとした原因はまだわかっていないと述べましたが、ADHDを含めた発達障害は多くの要因が複雑に絡み合って発症する多因子疾患と呼ばれています(7)。よってADHDの原因を科学的に解明していくには、人類学・遺伝学・神経解剖学・神経生理学・栄養学・心理学・社会科学の諸分野……と幅広い分野の知見と研究に頼る必要があります(4)。
 
ADHDの原因 をより明らかにしていくためには、まだ多くの研究によって模索する必要があります。しかしこれまで明らかにされてきたADHDのメカニズムによって、この障害に対する診断法や、対処法・治療法は発展してきています。
そしてこれから先も、ADHDのまだ明らかになっていない部分を知るための研究は続いていくと考えられます。
 
これからの研究で、ADHDの原因が解明され、発達障害治療の分野がさらに発展することを期待したいと思います。
 
 
<執筆者プロフィール>
須賀 香穂里(すが かほり)
神奈川大学人間科学部・人間科学科所属。社会心理学や人間関係をテーマとした執筆活動を行っている
 
<監修者プロフィール>
豊田 早苗(とよだ さなえ)
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年医師国家試験取得。総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年とよだクリニック開業。2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。著書に『あがり症克服プログラム』『3分ストレス解消法』など
 
 
【参考文献】
(1)発達障害療育の糸口
(2)田中英三郎(兵庫県こころのケアセンター)・市川宏伸(東京都立小児総合医療センター)(2016).大人のADHDの薬物療法 大人のADHD臨床-アセスメントから治療まで 中村和彦 金子書房 pp.74-78
(3)マーク・セリコウィッツ(発達小児科コンサルタント)(2000).ADHDの子どもたち 金剛出版 pp.92-97
(4)キャスリーン・ナドー(メリーランド・チェサピーク心理科サービス主任)&エレン・ディクソン(臨床心理科医)(2007).きみもきっとうまくいく 子どものためのADHDワークブック 改訂版 東京書籍株式会社 pp.74-85
(5)役に立つ薬の情報~専門薬学
(6)ADHDと遺伝の関係
(7)大人のADHD
(8)Secondhand smoke may affect kids’ mental health (Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine, online April 4, 2011.)
 
 

編集部オススメリンク

 
関連した情報として以下のようなものがありますので、ご参考にしてください。
 
医療法人社団雅会前田クリニック(心療内科・精神科)サイトの中で、ADHDの原因について説明したページである姫路 心療内科|前田クリニック ADHDの原因は、ADHDの原因について分かりやすくまとまっています。
 
「発達障害のチェック は、どのようにして行う? チェック方法について解説!」
 
「統合失調症の症状はどういうもの? 具体的な内容と対策まで」
 
「自閉症の診断 はどのように行うのか? 診断基準と検査の方法とは?」

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